資源企業
世界の主な資源企業について。
BHP Billiton(BHPビリトン)
BHP Billiton(BHPビリトン)は世界最大の鉱山企業であり、世界各国で事業展開。取り扱う資源も多岐にわたり、それぞれの資源において世界最大級の生産規模を持つ資源メジャー。2001年にオーストラリアのBHP(ブロークンヒル・プロプライエタリー)と英国のBilliton(ビリトン)の合併により成立。資源メジャーの1社であるRio Tinto(リオ・ティント)と同じく、オーストラリア企業であるBHP Biliton Limitedが同国の主要証券取引所であるASX(オーストラリア証券取引所)、英国企業であるBHP Billiton PlcがLSE(ロンドン証券取引所)に上場している二元上場会社(dual-listed company、DLC)。
オーストラリアの鉱業地域として知られるニューサウスウェールズ州Broken Hill(ブロークン・ヒル)での銀・鉛・亜鉛鉱山開発を目的として1885年に設立されたBHP(Broken Hill Proprietary Company、ブロークン・ヒル・プロプライエタリー)、インドネシアのスマトラ島近隣にある同国西部のBilliton(ビリトン島、現Belitung・ブリトゥン島)での錫開発を目的として1860年に設立されたBilliton(ビリトン)の2社が前身。
BHPは1899年には鉄鉱山開発、1915年には鉄鋼事業に参入。その後石炭鉱山の取得などを通して事業を多角化していく。また20世紀後半に入って原油事業、そしてUtah Internationalの買収によりチリでの銅開発を行う(Escondida銅鉱山)。その他ダイヤモンドの開発も行う鉱山開発・原油・鉄鋼を主体としたオーストラリアを代表する資源企業へと成長を遂げる。
Billitonはオランダで錫製錬を行っていたが、インドネシアで錫の他にアルミニウムの原料であるボーキサイト事業に参入し、1939年にはスリナムでもボーキサイト開発を開始し、事業の主体をボーキサイトへとシフト。またその後チタン、ニッケル、銅、アルミナ・アルミニウムの生産を開始し事業を多角化していく(Billitonは1997年にLSEの主要株価指数であるFTSE100種総合株価指数に採用されている)。
BHPとBillitonは2001年に合併し、それぞれ社名をBHP Billiton Limited(メルボルン本社)、BHP Billiton Plc(ロンドン本社)へと変更している。
1915年から行っているBHPのメイン事業の1つであった鉄鋼事業はオーストラリアの鉄鋼メーカーの買収などにより規模を拡大。1994年にBHP Steelへと社名変更されたが、BHP Billiton設立後の2002年に会社分割、鉄鋼事業から撤退している。BHP SteelはASXに上場している(現BlueScope Steel)。
2007年にRio Tinto(リオ・ティント)に買収提案、オーストラリアでの鉄鉱石生産の寡占化、生産から搬送の効率化を図ったが決裂し、2009年には両社の鉄鉱石事業を統合するための交渉を行っている。
2008年6月、インドネシアの国営企業PT Aneka Tambang(アネカ・タンバン)とインドネシア東部でニッケル鉱山の大規模合弁事業に合意。
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BHP Billitonの事業は大きく、
・Petroleum(原油・天然ガス) |
・Aluminium(アルミニウム) |
・Base Metals(ベースメタル) |
・Diamonds and Specialty Products(ダイヤモンド・チタン) |
・Stainless Steel Materials(ニッケル・コバルト) |
・Iron Ore(鉄鉱石) |
・Manganese(マンガン) |
・Metallurgical Coal(原料炭) |
・Energy Coal(一般炭) |
に分かれる。
ベースメタル部門には銅やウランなどの他、レアメタルであるモリブデンや銀も含まれる。
2007年6月期のエリア別売上高は、欧州向けがトップであり、全体の約27%を占める。次いで中国、オーストラリア、日本が多い。2005年6月期のエリア別売上高と比較して、中国向け売上高の全体に占める比率の上昇が目立つ。(12%→20%)
2008年6月期の部門別売上高は銅・亜鉛・鉛・銀のベースメタル部門の比率が高く、次いで原油、鉄鉱石が高い。特に鉄鉱石は価格の高騰により前年比71.2%の伸びを見せている。
2009年6月期は大幅な減益。鉄鉱石や石炭は堅調なものの、ベースメタルやニッケルの売上が激減している。
※Goldsworthy JV含むデータ |
BHP Billitonの鉄鉱石部門はグループの中核の1つであり、鉄鉱石の主要産出国であるオーストラリアにおいてRio Tinto、Fortescue Metals Group(フォーテスキュー・メタルズ・グループ)とともに鉄鉱石生産量のほとんどを占める。世界ではVale、Rio Tintoに次いで生産量世界3位。
生産拠点はオーストラリアとブラジルであり、オーストラリアの西オーストラリア州Pilbara(ピルバラ)地域の都市Newman(ニューマン)近隣での生産が同社の鉄鉱石生産量のほとんどを占める。Pilbara地域で生産された鉄鉱石は北部に位置するPort Hedlandで操業する2つの港湾施設より日本や韓国などのアジアへ出荷される。
2009年6月にRio Tintoと鉄鉱石事業の統合を発表。同地域で鉄鉱石生産を行っているRio Tintoと鉱山操業から資源運搬、鉱山拡張プロジェクトなどを統合することで経営の効率化を図っている。
ブラジルでは資源大手Valeと折半出資しているブラジル企業Samarcoを通して年間800万トンクラスの鉄鉱石を生産している。
BHP Billitonの2009年6月期の年間鉄鉱石生産量は約1億1440万トン。
BHP Billitonは銅生産ではチリのCODELCO(コデルコ)、米国のFreeport-McMoRan(フリーポート・マクモラン)に次ぐ世界最大級の生産企業。
南米での生産がメインであり、2001年に生産開始したペルーのAntamina(アンタミナ)鉱山をJVで展開している。BHP BillitonのAntamina銅鉱山の権益は33.75%。また世界最大の銅鉱山であるチリのEscondida(エスコンディーダ)鉱山の権益も所有。Antamina、Escondida鉱山における生産量が大きな比率を占める。
オーストラリアではWMC Resourcesを買収して取得した南オーストラリア州のOlympic Dam(オリンピック・ダム)鉱山から銅を生産。Olympic Damは世界最大級の銅鉱床であり、生産量の拡大に向けたプロジェクトが行われている。
BHP Billitonの2009年6月期の年間銅生産量は精鉱が約56万トン、電気銅が約65万トン。合計で約121万トン。
BHP Billitonはニッケル生産量ではロシアのNorilsk Nickel(ノリリスク・ニッケル)、ブラジルの資源大手Vale(ヴァーレ)傘下であるカナダのVale Inco(ヴァーレ・インコ)に次ぐ世界3位のニッケル生産企業であり、世界2位のフェロニッケル生産企業。生産拠点はオーストラリアであり、中南米のコロンビアでも鉱山を所有している。
オーストラリアにおける同社のニッケル部門Nickel West(ニッケル・ウエスト)では西オーストラリア州に所有するMt Keith鉱山などからニッケル硫化鉱を生産。同州に所有する複数のニッケル鉱山で生産された資源は主に同州のLeinsterプラントで選鉱過程を経てKalgoorlie製錬所でニッケルマットが生産されている。ニッケルマットはその後主要都市パース近隣のKwinana精錬所でニッケルブリケット及びニッケルパウダーへと加工されている。
また西オーストラリア州では他企業から買い取ったニッケル鉱石をKambalda(カンバルダ)プラントで製錬している。
クイーンズランド州ではYabuluニッケル精錬所を所有しており、西オーストラリア州のRavensthorpe鉱山から輸送された鉱石からニッケル、コバルトの生産を行っている他、他企業がインドネシアやフィリピン、フランス海外領土ニューカレドニアで生産した鉱石を買い取ってニッケルやコバルトの生産も行っている。Yabulu精錬所はオーストラリア国内における主要コバルト精錬所でもある。
コロンビアでは世界最大級のフェロニッケル生産企業であるCerro Matosoの権益を99.94%所有しており、ラテライト鉱石から低コストでのフェロニッケル生産を行っている。
BHP Billitonの2009年6月期の年間ニッケル生産量は約17万3000トン。
BHP Billitonは世界最大の銀生産企業であり、銀部門の主力鉱山は世界最大の銀鉱山であるオーストラリアのCannington鉱山。同鉱山からの2007年6月期の銀生産量はBHP Billitonの年間銀総生産量の約80%を占める。
2009年6月期の年間銀総生産量は約4134万オンス。
亜鉛部門の主力鉱山はペルーのAntamina(アンタミナ)鉱山、オーストラリアのCannington鉱山。
2009年6月期の年間亜鉛生産量は約16万トン。
BHP Billitonの鉛部門はオーストラリアが生産拠点。同国に所有する世界最大級の鉛鉱山であるCannington鉱山から生産を行っている。
2009年6月期の年間鉛生産量は約23万トン。
BHP Billitonは世界最大級のウラン生産企業。オーストラリアのOlympic Dam(オリンピック・ダム)鉱山からの生産のみであり、同鉱山はWMC Resouces(WMCリソーシズ)を買収することにより取得している。Olympic Dam銅・ウラン鉱山はウラン生産量においてはカナダのMcArthur River(マッカーサー・リバー)鉱山、オーストラリアのRanger(レンジャー)鉱山に次いで世界第3の規模。
2009年6月期の年間ウラン生産量は約4,000トン。
ダイヤモンド部門の生産拠点はカナダであり、Ekati鉱山で生産。
2009年6月期の年間ダイヤモンド生産量は約322万カラット。
主な鉱山 |
BHP Billiton(BHPビリトン)の主な鉱山とその産物、生産に携わる傘下企業・JVの名称。
オーストラリア | ||||
・Appin | - | 石炭(原料炭) | ※ | Illawarra Coal |
・Appin West | - | 石炭(原料炭) | ※ | Illawarra Coal |
・Area C | - | 鉄鉱石 | ||
・Blackwater | - | 石炭(原料炭) | ※ | BMA(BHP Billiton Mitsubishi Alliance) |
・Boddington | - | ボーキサイト | ※ | Worsley JV |
・Broadmeadow | - | 石炭(原料炭) | ※ | BMA |
・Cannington | - | 鉛・亜鉛・銀 | ||
・Cordeaux | - | 石炭(原料炭) | ※ | Illawarra Coal |
・Dendrobium | - | 石炭(原料炭) | ※ | Illawarra Coal |
・Goonyella Riverside | - | 石炭(原料炭) | ※ | BMA |
・Gregory Crinum | - | 石炭(原料炭) | ※ | BMA |
・Groote Eylandt | - | マンガン | ※ | GEMCO(Groote Eylandt Mining Company) |
・Jimblebar | - | 鉄鉱石 | ||
・Kemira Valley | - | 石炭(原料炭) | ※ | Illawarra Coal |
・Leinster | - | ニッケル | ※ | Nickel West |
・Mt Newman/Yandi/Goldsworthy | - | 鉄鉱石 | ||
・Mt Arthur | - | 石炭(一般炭) | ※ | Mt Arthur Coal Pty Ltd |
・Mt Keith | - | ニッケル | ※ | Nickel West |
・Mt Whaleback | - | 鉄鉱石 | ||
・Norwich Park | - | 石炭(原料炭) | ※ | BMA |
・Olympic Dam | - | 銅・ウラン・金・銀 | ||
・Peak Downs | - | 石炭(原料炭) | ※ | BMA |
・Poitrel | - | 石炭(原料炭) | ※ | BMC(BHP Mitsui Coal) |
・Ravensthorpe | - | ニッケル・コバルト | ||
・Saraji | - | 石炭(原料炭) | ※ | BMA |
・South Walker Creek | - | 石炭(原料炭) | ※ | BMC |
・West Cliff | - | 石炭(原料炭) | ※ | Illawarra Coal |
・Yarrie | - | 鉄鉱石 |
カナダ | ||
・Ekati | - | ダイヤモンド |
コロンビア | ||||
・Cerrejon | - | 石炭(一般炭) | ※ | Cerrejon Coal Company |
・Cerro Matoso | - | フェロニッケル | ※ | Cerro Matoso S.A. |
スリナム | ||
・Coermotibo | - | ボーキサイト |
・Kaaimangrasie | - | ボーキサイト |
・Klaverblad | - | ボーキサイト |
チリ | ||||
・Cerro Colorado | - | 銅 | ||
・Escondida | - | 銅・金・銀 | ※ | Minera Escondida |
・Spence | - | 銅 |
ブラジル | ||||
・Germano | - | 鉄鉱石 | ※ | Samarco |
・MRN | - | ボーキサイト | ※ | MRN |
米国 | ||
・Navajo | - | 石炭(一般炭) |
・Pinto Valley | - | 銅 |
・San Juan | - | 石炭(一般炭) |
ペルー | ||
・Antamina | - | 銅・亜鉛・鉛・銀・モリブデン |
南アフリカ共和国 | ||||
・Douglas | - | 石炭(一般炭) | ※ | BHP Billiton Energy Coal South Africa |
・Khutala | - | 石炭(一般炭) | ※ | BHP Billiton Energy Coal South Africa |
・Klipspruit | - | 石炭(一般炭) | ※ | BHP Billiton Energy Coal South Africa |
・Mamatwan | - | マンガン | ※ | Samancor |
・Middelburg | - | 石炭(一般炭) | ※ | BHP Billiton Energy Coal South Africa |
・Wessels | - | マンガン | ※ | Samancor |
主なプロジェクト |
BHP Billiton(BHPビリトン)の主な開発プロジェクトとその予定される産物、開発に携わる傘下企業・JVの名称。
インドネシア | ||
・Maruwai | - | 石炭(原料炭) |
オーストラリア | ||
・Mt Arthur expansion | - | 石炭(一般炭) |
・New Saraji | - | 石炭(原料炭) |
・Olympic Dam expansion | - | 銅・ウラン・金 |
カナダ | ||
・Ekati expansion | - | ダイヤモンド |
・Jansen | - | カリウム |
スリナム | ||
・Bakhuis | - | ボーキサイト |
米国 | ||
・Navajo South(Desert Rock) | - | 石炭(一般炭) |
モザンビーク | ||
・Corridor Sands | - | チタン |
参考:各社HP